麻布台ヒルズギャラリーにて開催された体験型展覧会「ギガマート展」。
本展において、「体験設計」「カメラ版”盗”のシステム開発」「制作統括」を中心に、企画・制作を担当致しました。
本展の舞台は、架空のコンビニエンスストア「GIGAMART」。
日本独自の進化を重ねてきた「コンビニ」をひとつの文化的IPとして捉え、その新たな可能性を探る「Conveni Alternative」というテーマのもと企画されました。
また本企画は、「盗-TOH-」シリーズの系譜を受け継ぎ、これまで同作を手掛けてきたクリエイティブチームを中心に、ラッパー/クリエイティブディレクターのTaiTan氏による原案を、多様なクリエイターとともに形にしています。
店内を埋め尽くす商品や広告、次々に生まれるコラボレーション、合理化された商品陳列、そしてサービスやエンターテインメントまでを取り込んでいく空間。
そうしたコンビニの特異性を「戯画/GIGA」化することで、私たちが日常の中で無意識に受け入れている「消費・商品・広告」の関係性を解体し、新たな体験として再構築することを空間体験として表現しました。
会場では、巨大化した「GIGAポテトチップス」、監視カメラの視線をかいくぐりながら商品を盗る「カメラ版“盗”」、GIGAMARTのオリジナル商品やコラボレーショングッズを実際に購入できるショップなどを展開。
巨大な商品に触れる、商品を“盗む”、そして実際に購入する。商品との関わり方をさまざまな角度から変化させることで、日常の「消費」を身体的に捉え直す体験を、ひとつの空間の中に構成しました。
Key Points
空間と体験を分けず、GIGAMARTという「世界観」を構築


本展では、個々のコンテンツを配置するための展示空間をつくるのではなく、架空のコンビニ「GIGAMART」というひとつの世界そのものを空間として成立させることを重視しました。
その世界を形づくるために、売り場、商品棚、広告やサイン、バックヤード、搬入口、監視設備など、コンビニを構成するさまざまな要素に着目しました。
それらを空間、グラフィック、商品、テクニカルなど異なる領域のクリエイターとともに、「GIGAMARTならどう存在するか」という視点から一つひとつ具体化していきました。
巨大化された商品や過剰な広告表現など、現実のコンビニに存在する要素を「GIGA/戯画」化する一方で、店舗の表側だけではなく、その裏側にあるストックや物流、管理の空間まで含めて設計することで、まるでひとつの店舗が本当にそこに存在しているような環境をつくりました。
空間の中にコンテンツを置くのではなく、先に世界観を構築し、その世界の中にコンテンツや体験が自然に存在している状態をつくる。
それが、本展における空間づくりの考え方です。
カメラ版「盗-TOH-」の体験設計・開発

本展の中心となる体験のひとつが、「カメラに見つからなければ、店内の商品をなんでも盗める体験」です。
前身となる企画の「盗-TOH-」では、「音を出してはいけない」というシンプルなルールによって、人の歩き方や姿勢、商品の持ち方まで変化させる体験をつくりました。今回はその構造を発展させ、ルールを「監視カメラに人間として認識されてはいけない」へとアップデートしました。会場内に設置された複数のカメラ映像から、AIによる人物認識を用いて参加者をリアルタイムで検知する仕組みを構築しました。

一方で、決められた攻略方法をなぞるゲームにはせず、参加者自身が自由に攻略法を発見できる余白を残しました。
カメラの死角を探す、身体を小さくする、什器や商品を利用してシルエットを隠すなど、参加者によって様々な行動が生まれ、さらに他の参加者のプレイを見ることで、新しい攻略法が発見され、次の体験者へと共有されていきます。
そのため開発では、AIの認識精度だけでなく、カメラの位置や画角、什器・商品の配置、認識のしやすさまでを一体で調整。「簡単すぎないが、工夫すれば突破できる」状態を探りながら、何度も実地検証を重ねました。
ひとつの正解を提示するのではなく、シンプルなルールと環境だけを用意し、その中から参加者自身の行動や攻略法が生まれていく。そうした自由度のある体験を、空間とテクノロジーの両面から設計しました。
企画から実装までを横断するプロダクション統括
本プロジェクトでは、あらかじめ完成形を決め、それを各セクションが分担して制作するのではなく、異なる専門性を持つメンバーが並走しながら、企画を更新していく進め方をとりました。「GIGAMARTらしさとは何か?」といった問いを共有しながら、それぞれの視点から企画を具体化していきました。
当社は、各セクションをつなぎながら、企画を空間・体験・システムへと翻訳し、実装までを成立させる制作統括を担当しました。制作途中に生まれたアイデアを再び企画へ戻し、空間を変更し、ルールを変え、システムを調整する。そうした往復を繰り返しながら、個別の制作物をつくるのではなく、GIGAMARTというひとつの世界として統合していくことを目指しました。

